古い民謡のなかの江戸の火事
東京都西多摩郡、檜原村(ひのはらむら)は、JR五日市線の武蔵五日市駅から先にある地域です。
次はこの村に伝わる古い民謡と、その解説です。
お江戸が焼けて 山栄ゆ 杉丸太 ヤンソレ
もみ 栗 角の値のよさ
やれ もみ 栗 角の値のよさ
あれみよ雲が 江戸へとぶ 雲にのり ヤンソレ
わが身も 江戸へ 江戸へと
やれ わが身も 江戸へ 江戸へと
檜原村の古い民謡にこのようなものがありますが、江戸の大火と地元林業との密接な関係を、「お江戸が焼けて山栄ゆ」と露骨なほど端的に詠っております。
《引用文献》平野順治,1979,東京都大田区,『史誌 第12号』,p8
この民謡にある「わが身も 江戸へ 江戸へと」という歌詞は、そのまま筏乗りたちのことを指しているような言葉です。
資料にある江戸の町の火事
では、民謡の歌詞にある江戸の町では、どれだけ大きな火事があったのでしょうか。
二つの資料を見ることにします。
資料1 江戸時代から明治時代の火事一覧
まず一つ目は、東京都公文書館にある江戸の火事の一覧です。
この資料には、記録にある江戸時代から明治時代の終わりまでの火事が載っています。
詳細は次のサイトを見てください。
《東京都公文書館サイト》
資料2 江戸の大火41件の一覧
二つ目の資料は、書籍にある江戸時代の大火です。
次は引用した書籍名とその内容です。
《引用元》
・著者 :児玉幸多 杉山博
・出版年:1969
・出版社:山川出版社
・書籍名:『東京都の歴史 県央シリーズ13』
・ページ:p20−28
※抜粋し一部追加して作成
上の表には「江戸の三大火事」と言われた「明暦の江戸大火」、「目黒行人坂の火事」、「丙寅の大火」も入っています。
そして、資料1の『東京市史稿 変災篇第4、5』を見ると、上記の表にある41件以外にも、かなりの数の火事があったことがわかります。
まとめ
次の引用文は、江戸の大火事と筏流しの関係を述べています。
多摩川における材木の流送は、このように江戸開府当初から行われていたが、筏流しが盛んになるのは明暦三年(一六五七)の「振袖火事」以後のことといわれている。それは地理的に江戸に近い関係もあって、「お江戸が焼けて山栄ゆ」と、ほぼ三年に一度の割りで発生した江戸大火による材木需要に刺激されて発展していったのである。
《引用元》新倉善之,1988,東京都大田区,『大田の史話その2』,p215